2003年5月9日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)宇宙科学研究本部が小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」を打ち上げ、小惑星「いとかわ」に向かわせました。「はやぶさ」のミッションは小惑星の表面から物質のサンプルを採取すること。目標の小惑星に到着し、サンプリングに成功、地球に帰還したのは記憶に新しいと思います。この「はやぶさ」の外装にもUBEのポリイミドが使用されました。
宇宙向けの商品は、どの時期に誰が作ったのかしっかりと管理していなければ採用されず、採用後もJAXAのチェックが毎年あります。決められた手順で生産されているか、ドキュメント管理が基準を満たしているかなどが、細かく確認で行われます。
さらに、どんなに高機能な新素材をつくったとしても、ただそれだけでは採用してもらえません。フライト実績という信頼性が必要なのです。しかし、UBEでは宇宙環境の適合試験まではできません。JAXAの協力の下、膨大な試験を行い、膨大なデータを積み重ねます。そこでやっと、検討してもらえるのです。
その結果、UBEのポリイミドフィルム「ユーピレックス」は、断熱材として国産人工衛星のほとんどに搭載されています。
宇宙空間では太陽の当たる面は170℃を超え、逆側はマイナス70℃にもなる。そんな激しい温度変化から衛星などを守っている、サーマルブランケット。UBEのポリイミドフィルムはそんな環境でも耐えられる高分子フィルムなのです。
あまり知られてはいませんが、地球上でも、南極からテレビなどの身近なところまで、様々な場所で活躍しています。
小惑星探査機「はやぶさ(MUSES-C)」(C)宇宙航空研究開発機構(JAXA)
チラノ繊維は、直径約10ミクロンの炭化ケイ素系セラミックス長繊維で2000℃の熱に耐える超耐熱性の複合材料です。 繊維状で形を整えることができるため加工が容易かつ、金属より軽く、高強度、冷却が不要、など優れた特性を持っています。
チラノヘックス(セラミックス成形体)
チラノ繊維を高温、高圧下で結合した全く新しいタイプのセラミックス成形体です。耐熱はもちろん熱伝導率が小さく高い強度を持つため、航空機のエンジン部材の断熱材や各種耐熱部材として使用されています。
チラノ繊維は、最強の恐竜と言われる「チラノザウルス」から命名されたほどの高強度を持ち、耐熱性とあわせて非常に優れた特性を持っています。この特性を活かし航空・宇宙分野での用途開発が進められています。
また、チラノ繊維の持つ特性はこれからの超高速輸送、エネルギー高効率化、CO2・NOx低減、排ガス浄化などの環境保全に大きな役割を担うものとして期待が寄せられています。
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