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第5回:石炭事業 −創業から続くビジネス
炭鉱から始まったUBE
石炭ビジネスの沿革
UBEの歴史は、1897年に設立された沖ノ山炭鉱を創業と位置付けています。炭鉱の最盛期(1940年)には年間300万トンもの石炭を採掘していました。その後、1950年代後半の石油時代の到来により、UBEでも沖ノ山炭鉱をはじめ国内での石炭採鉱を1977年に終了しました。

しかし、1973年の第1次石油危機の際、多様なエネルギー資源の調達が求められるようになりました。UBEでは、他社に先駆けて自社の燃料に海外炭を輸入し、さらに、産業界に生じた需要に対応するために、輸入・保管・販売を行う新しい石炭事業を展開するようになりました。

現在では、国内シェア1位の年間600万トンの石炭を取り扱っており、調達先はオーストラリアやインドネシア、中国、ロシアを中心に南アフリカ、コロンビア等の世界各国に広がっています。また、石油精製時にできる石油コークスもアメリカやカナダから調達しています。
沖ノ山鉱業所入坑風景
UBEの石炭ビジネスの現状と強み
1、社内への石炭供給(自家発電所,セメント工場等)
UBEでは自社で火力発電所を有し、中国電力(株)への卸電力事業も行っています。そのため、安定したエネルギーを自社で調達できることが、大きな価値を有しています。また、化学製品の主原料の一つであるアンモニアを生産する際、石油コークスをガス化し原料として使用しています。そのため、化学製品の安定供給にも大きな貢献をしています。

2、社外への石炭販売事業とコールセンターを利用した倉庫業(預り炭)事業
UBEでは安定した社内需要をベースに、日本一の一般炭取扱い数量を誇る沖の山コールセンターを有効利用し、社内・社外向けの石炭貯炭と販売の両方を行っています。購買パワーと船腹調達競争力を維持し、開発部による顧客に密着した営業技術サービスを深化させ、同業他社とは違った付加価値の高いサービスを提供しています。
石炭販売とその焼却灰の引き取りまで一貫してできるのも大きな強みです。
今もこれからも世界・日本の主たるエネルギーソース
石炭は地球温暖化の元凶?
石炭は、単位エネルギー当たりのCO2原単位はLNG(天然ガス)の1.5倍。(※図1参照)地球温暖化に寄与する度合いが大きいのは事実です。ただ、熱量1,000キロカロリー当たりの価格で比較すると石炭約1.4円、LNG3.6円、原油(重油)5.8円と依然圧倒的に低コストです。また、中国、インド島の需要が急拡大している国自体が主要産炭国でもあり、途上国の経済発展が受給逼迫にすぐに結びつくものではないため、安定した供給が可能です。可採鉱量年数、エネルギー依存度等より、石炭の位置付けはこれからも大きく変わることはないと考えられます。
特に最近は、東日本大震災に端を発した原子力発電への不安感から、石炭火力発電の重要性が再び見直されています。

もちろん、UBEでもCO2排出削減のための業界ごとの自主行動計画に則り、地球環境保全のための様々な取り組みを積極的に行っています。
石炭灰を原料にしたリサイクル
省資源省エネルギー
バイオマスの燃料活用
廃プラのリサイクル、燃料化
サスティナブルケミストリーへの取り組み
バイオエタノール製造への分離膜の適用 等
世界でどのくらい使われている?
世界の一次エネルギーの石炭依存度は、2003年は25%前後で、2004年に46億トン、2010年には56億トンが見込まれていて、世界のエネルギー源の約3割を占めています。(※図2参照)日本の消費量は年間約1.9億トンです。経済成長が続く中国、インドでは現在計28億トンが使われていますが、毎年日本クラスの消費国が誕生するペースで増加しています。

近年、導入が盛んな風力、太陽光発電等の新エネルギーも、日本の全電力の約1%に過ぎません。安定かつ安価な石炭は、エネルギー源として将来も不変な資源として存在感を示しています。
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
コールチェーン
石炭の調達とユーザーへの流れ
石炭は埋蔵量も多く、簡単に手に入るように思われるかもしれませんが、実際の炭鉱に行くと、その採掘にはたくさんの人、手間、お金、設備、人命がかかっており、貴重な資源として「黒いダイヤ」と言われています。

そういった石炭の安定調達・供給は苦労も多いのが現状です。ヨーロッパ経済の不調とアメリカ経済の回復遅れが巡り巡ってアジア経済にも影響を与え、中国での使用量が減っている中、石炭産出地である豪州での洪水やインドネシアの大雨の影響で石炭の確保が困難となり、UBEも緊急輸入をするほど需給がタイトとなったこともあります。取扱いを増やすため、特殊な石炭を受け入れるための設備工事をし、一時的に貯炭能力が減少したりしましたが、その後は、順調に出荷できています。しかしながら安定確保への尽力に努めています。
沖の山コールセンター
1980年に創業を開始。日本の重要なエネルギー源である石炭の安定供給を担う、日本最大の一般炭・輸入中継基地(年間取扱量:600万トン)です。地域に信頼されるコールセンターを目指して、社員ならびに協力会社が一体となって、安全衛生、環境保全、保安防災に取り組んでいます。
海上交通の要所に位置し、パナマックス級の大型石炭運搬船が接岸できる石炭専用受入岸壁を有しています。小型船舶については、公共岸壁・芝中埠頭の各荷揚場も併用し、対応しています。
各行程において、細心の注意を払い、環境にも配慮し、管理運営を行っています。
  • 石炭を積み上げるスタッカー(第一貯炭場)
  • 石炭船
  • 沖の山コールセンター
石炭事業の戦略
第6回:航空宇宙材料
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